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「経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望」

 今日はアンドリュー・J.サター著「経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望」を紹介したいと思います。

経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望 (講談社現代新書)

経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望 (講談社現代新書)


著者は経済学者ではなく法学者です。私の思想と近くて共感できた本でした。

  • 一人あたり平均GDPは上がっても、世帯所得の中央値は下がっている。
  • 経済成長を目指す「効率化」は失業者を増やしていく。またサービスの低下を招く
  • 経済は無限に成長できるという思想は誤り。いわゆるサステイナブルグロースにも批判的見解を示している。
  • 実経済をおいて膨れ上がった金融市場に対する批判。
  • GDPの成長ではなくHDIなどの「幸福度」の成長を目指すべきだ。

そのような点を批判し「減成長によ繁栄」を目指すために幾つかの提言をしている。

  • 「生産性」から「質」へ
  • 「産業的」「操作的」ツールから、「共生的ツールへ」
  • 「創造的破壊」から「耐久性」へ
    • 壊れやすい製品を作るのではなく、耐久性の高い製品をつくる。環境にもよい
  • 依存から安定へ
    • 東京一極集中から、地方へ
  • 排除から共有へ
  • 切迫感から熟考へ

一方で、今の日本が抱える問題、社会保障費の拡大、少子化、などに対する解決策が十分に提示されているとは思えなかった。著者の唱える「減成長による繁栄」のための方法は抽象的なものが多く、具体的な提示ではない。

しかし、我々が目指すべき目標は果たして「経済成長」なのだろうか?一人ひとりの幸福度や地球環境の維持なのではないか、という主張には大いに共感する。問題はどうやってそれを手に入れるのかだ。