統合失調症の偏見
体調の方も大きな問題はありません。やはり疲れやすいのと、時々体調の悪い日があるのは問題です。慢性疾患なのですぐに治るというものでもありません。
統合失調症の有病率は約1%、つまり100人に1人が患者なわけです。これは胃潰瘍と同程度です。その割には、この病気はあまり理解されているとは言えないと思います。もちろん、胃潰瘍は比較的簡単に治る病気であり、発病率という意味では統合失調症のほうがぐっと低いわけですけれども。統合失調症の年間発症率は1万人あたり1人です。
これに対して、同じ精神疾患でもうつ病は比較的社会に受け入れられつつあると言えるでしょう。統合失調症がうつ病と違い、テレビ報道などで周知が進まないのはなぜでしょうか?統合失調症というのは扱いにくい話題であるのかもしれません。私は陽性症状のない統合失調症患者です。私にとってすら統合失調症患者の妄想というのは共感しづらい症状ではあります。私にとってのこの病気は、無気力感や倦怠感、易疲労感であるからです。健康な人にとって、妄想のある統合失調症患者に共感することは非常に難しいことでしょう。しかし、妄想というのは比較的抗精神病薬がよく効く症状であるといいます。治療を受けている統合失調症患者は理解しづらいものではないのではないでしょう。
おそらく、もう一つの大きな問題は統合失調症患者が危険であるという認識でしょう。精神障害者と犯罪の各種の統計・調査には以下のように書かれています。
3.重大犯罪に占める精神障害者等の占める割合(平成12年度犯罪白書) 放火 14・4%(108人) 殺人 9・4%(124人) 強盗 1・1%(43人) 強姦・強制猥褻等 1・5%(77人) 傷害・暴行 0・9%(257人) 以上のとおり、放火・殺人に占める精神障害者等の割合は顕著に高い。この点が刑事政策上精神障 害者を危険視する最大の根拠になっている。 しかし、他方、平成12年に殺人・放火を犯した精神障害者等の数は合わせて232人に過ぎず、 これは全精神障害者の約1万人に1人の割合に過ぎない。
実際に、精神障害者*1の重大犯罪に占める割合は高いのです。しかし、同時に多くの統合失調患者が危険な訳ではありません。これは患者にとって有利な情報とも不利な情報ともいえます。すべての統合失調症患者を隔離すべき、のような極端な意見はコストに見合わないということができます。しかし、実際に一般の健康な人と比べれば危険といえなくもない、というデータです。統合失調症がわかる本によると、犯罪を犯した統合失調症患者の多くは被害妄想に駆られていたために相手に先制攻撃をしてしまった、という例が多いそうです。前述のとおり、妄想は治療によって改善しやすい症状ですから、統合失調症患者が危険であるという偏見を減らすためには、未治療の統合失調症患者を減らすことが効果的なのではないかと思います。これすら、一言で言えるほど簡単な事ではないのかもしれません。偏見の為に家族が統合失調症であることを認めたがらない人は多いそうです。また、この病気の患者は病識がない(疾病失認)ことが多いからです。