マイナス×マイナス

メンヘラ人工知能エンジニアのブログ/ 博士(工学)

統合失調症のアヤシイ治療法

 今回は私の知る統合失調症のアヤシイ治療法をまとめてみようと思う。今回上げたモノを詐欺であると糾弾するつもりは無い。ただ、私が「コレはアヤシイ」と主観的に思ったものを連ねているに過ぎない。そこんところをひとつよろしく。
 15%ぐらいの統合失調症患者は現代の医学を以てしても治療がうまくいかない治療抵抗性の患者である。そのような状態にある患者や患者家族がワラを掴むように、これらの治療法を試してしまいたくなるのだろう。

統合失調症は霊の憑依説

 もう、タイトルだけでなにも語らなくていいような気さえするのだけれど、パワースポットとかがブームになってしまう昨今、無視してもおけない。

はるかな昔では、統合失調症患者は悪魔憑きとか狐憑きとか言われていた。その生き残りであろう。統合失調症が脳の病気であることは、さまざまな証拠に支えられており、今更、悪霊を持ち出す必要はない。

統合失調症とともに歩む会

 私が一番迷惑しているのがこの団体である。自分の娘が統合失調症を発症したことをきっかけに父親が開発した「薬に頼らない統合失調症克服法」という情報商材を売っている。
 私はこの商品を買っていないので肝心の克服法の中身はわからない。とりあえず、栄養療法の一種であるらしい。そんなに効果があるんなら論文にでもして公開してほしい所だ。
 この団体の迷惑な所は非常に商魂たくましいところである。私がtwitterで同じ統合失調症患者をさがそうとして「統合失調症」と検索すると、この団体のスパムアカウントばかりがヒットする。私のブログにすら、トラックバックを送ってくる始末である。

ナイアシン療法

エイブラハム・ホッファー博士という人が1950年代に始めた、統合失調症の治療法である。これは上の2つとは違い、当時にはまともな治療法であると信じられていたのかもしれない。
http://www.shinjuku-clinic.jp/konnakata/K_VB3.html
google検索「ナイアシン 統合失調症」
 これは、統合失調症の発症仮説のうち、アドレノクロム仮説に基づいている治療法である。アドレノクロム仮説とは、統合失調症の妄想や幻聴が、脳内でノルアドレナリンの代謝物であるアドレノクロムが過剰に生成されるために起こるという仮説である。ナイアシンがアドレノクロムの生成を阻害するので、ナイアシンをたくさんとれば統合失調症が治る、という主張だ。しかし、現代の精神医学ではこのアドレノクロム仮説は否定されている。現在はドーパミン仮説やグルタミン酸仮説のほうが主流である。現に、現在発売されている抗精神病薬ドーパミンD2受容体を阻害するものがほとんどである。アドレノクロム仮説は過去の仮説なのだ。
 しかし、上のような経緯を知らないまま、「統合失調症ナイアシン不足」というような情報が未だに闊歩しているのが嘆かわしい。私は何も栄養療法をすべて否定しているわけではない。きちんとした統計手続きを経て提唱される栄養療法なら喜んで受け入れる。

ナイアシン療法について追記しました
統合失調症にナイアシン療法は効かないよ

統合失調症は脳の傷説

 これは、日本のある精神科医が著書で主張している仮説である。著者によると、この脳の傷を栄養療法と運動療法によって修復すれば統合失調症が治るということである。
Amazon:こころの病は脳の傷
 コレについては私が語るより、林先生のサイトをみるほうがよいだろう。
【1639】脳の傷と統合失調症の関係を語る医師は、【1533】と同一人物でしょうか
 統合失調症うつ病を区別していなかったりとかなりトンデモない仮説である。amazonの評価を見る限りかなり信じているひとがいるようである。そもそも、そんな傷があるのなら、他の精神科医が気づかないハズがないと思うのだが。

まとめ

 統合失調症は10代から20代で発症することが多い。そして治療には何年もの時間がかかる。中には治療抵抗性の患者がいて、その方たちには現在有効な治療法が限られている*1。患者は病気によって青春時代を奪われてしまう。
 そんななかで、わらをも掴むような気持ちで効果があると謳っている手法に手を伸ばさずにはいられない気持ちはとてもよく理解できる。しかし、現時点では精神科で受けられる治療より優れた手法は存在しないと考えるべきだろう。もし、効果があるのなら、治験のあと病院で採用されるはずだからである。
 無視できない問題として、別の病気(強迫性障害解離性障害)の患者が統合失調症と誤診されている場合がある。この場合は当然、抗精神病薬による治療は効果が無い。薬が効かないので治療抵抗性統合失調症と診断され、大量の薬を飲み副作用に苦しむことになる。そんな時、統合失調症が治ると謳っているこれらの手法に手を伸ばしたくなるだろう。しかし、その場合の正しい対処はセカンドオピニオンを受けることである。
 頭語を繰り返すが、私はこれらの手法を糾弾するつもりは無い。自分でこれらの手法が効果があると思えば、試してみればよいだろう。その場合でも、薬物療法をやめない事をおすすめする。第二世代抗精神病薬による治療が現代最も有効な統合失調症の治療法だからである。

*1:クロザリルや電気けいれん療法は治療抵抗性の患者にも有効らしい